Slow Innovation Day

【Slow Innovation Day at TRAFFFIC in Kyoto】2019.11.19

”イノベーションの新パラダイムをつくろう” イベントレポート


2019年11月19日夜、京都のTRAFFFICにて、”Slow Innovation Day”イベントを開催いたしました。

株式会社フューチャーセッションズから事業分割によって10月1日に生まれた新会社、Slow Innovation株式会社、初のオープンイベントです。



ゲスト・ファシリテーターとしてBob Stilger博士をお迎えし、ゲストトークには会場となった株式会社ウエダ本社 社長の岡村 充泰さん、TRAFFFICRELEASE; 代表の桜井 肖典さんからお話を頂きながら、

─── イノベーションの本質とは何か?


─── 私たちが目指すべき本当に豊かな生き方・働き方・価値の生み出し方とはどんなものなのだろうか?

約40名の参加者の皆さんと一緒に、丁寧に対話を紡ぐ時間となりました。

オープニング


Slow Innovationとは、フューチャーセッションズ創業者である野村の次なるチャレンジとして、社会に問いかける新しいコンセプトです。

フューチャーセッションズでは、企業・行政・NGOの3つのセクターの対話と協力を引き出すファシリテーションによって、集合知を用いて社会課題解決型のイノベーションを起こす支援、更には社会に開かれた組織づくりの支援をしています。その過程で生まれた「渋谷をつなげる30人」は、「地域が最先端のイノベーションフィールドになる」との確信を深めることになりました。


また「渋谷をつなげる30人」を4年間続けてきた中で、「イノベーションとは、プロセスを大切にし、人と人との関係性をつくり、小さな変化がさざ波のように社会を進化させていくもの」という実感を得、この考えをつき詰めるために、各地域での「つなげる30(Project30)」の推進をコアアクティビティとするSlow Innovation株式会社を立ち上げることになりました。


Slow Innovation株式会社が、みなさんにお誘いしたい問いは次のようなものです。

─── 「短期的には小さな変化にしか見えないけれども、長期的には人々のマインドや関係性を変えながら、より大きな変革をゆっくりと起こす」このSlow Innovationのコンセプトを中心に据えた時、わたしたちはどのような社会を創っていくのでしょうか?


一緒に考える足場として、私たちの考える「イノベーションのこれから」や「京都をつなげる30人」プロジェクト、「市民協働エコシステム」についてご紹介いたしました。



対話


「いま話されたことを全部頭で理解しようとするよりも、なぜSlow Innovationがいま大切なのか?なぜ自分にとって大切なのか? について話してみましょう。それではペアで話してみてください」


という掛け声と同時に、会場は議論に火が付いたように一気に話し始めます。その様子にBobも驚き、対話終了の合図で会場が静まり返ると、開口一番「いったい何が皆さんをそこまで興奮させたのでしょう」と言葉を漏らしました。


会場から数名の方に、どのような話をされていたのかを全体に共有していただきました。

野村さんの話には95%の話には大賛成なんですが、その後の問い「自分にとって」という部分には強い違和感を感じました。なぜなら、私にとってはファンタジーにしか思えないからです。

Slowは最短距離で確実に進むということか?Fastは急いで目の前に捕らわれて結局進まないということか?と、まずそれぞれの言葉について考えていました。

ここにいる人たちは意識高い系で難しい話が出来る人達だと思うけれども、街の中ではこのような話は出来ないと思った。なぜ出来ないか?を考えることから始めないといけない、という話をしていました。

Slow Innovationを始める前に、いまあまり問題を感じていない自分がいるという話をしていました。なので、もう少し「いまどういう問題があって、これからどういう問題が起きてくるか?」ということを考えていかなければならないと感じました。

社会の中で将来に対する不安が深まっているように感じています。また、その不安をシェアして不安で盛り上がるような悪循環もあるように見えます。そこを一度立ち止まって、未来について、幸せについて、ゆっくり考えられるようになれば良いなと思っています。


皆さんからの発表を聴き、Bobから更なる問いが投げかけられました。

いまお話下さった「いま私たちがしているやり方に問題があるのかどうか?」という質問は、重要なものだと思いました。

おそらく、いま現在のやり方で私たちの欲しい結果が得られ、そして幸せならば、何も問題は無いでしょう。

それでは、一体どれだけの人が「いま現在している仕事・活動で得られる結果に、本当に満足し、幸せだ」と感じているでしょうか?


5段階(5:心から満足、4:完ぺきではないけれども良い感じ、3:方向は正しいけれども到達していない、2:中間、1:実は全然)で自己評価すると、どこに当てはまりますか?


実はSlow Innovationとは、この曖昧な中間地点「方向は正しいけれども、Slow」へ向かうということなのではないでしょうか。曖昧というのは、いまの私たちにとっては”新しいマインドセット(心構え)”で、”新しいスキルセット(技術)”を必要とし、そしてこれらこそが”文化を新しく変化させること”に繋がるのです。


ゲストトーク


ウエダ本社 社長 岡村充泰さん

ウエダ本社はオフィスの設計施工会社ですが、我々の関心事は「オフィスをデザインする」ということがベースではありません。

人と人との繋がりや交流、動線、モチベーションと言ったキーワードを集めて、そこから「価値を生み出す環境を作ろう」という想いがベースです。

その結果として、最適なオフィスの形を設計施工していますが、それがオフィスの外に出て、街づくりやビルリノベーションの形となったりもしています。


野村さんのお話の中にCSVがありましたが、まさに我々は「存在意義が無ければ意味が無い」という考えからスタートし、「社会の課題に対して、自分たちの本業で何が出来るのか?」に向き合い、20年近くコツコツとスローに取り組み続けています。


そして今日のこの会場「Trafffic」は、RELEASE;さんと一緒に”働き方について、Freedom from Space, Time and Mindset=場所と時間とマインドセットから自由になろう”という願いを込めて作った場です。


この場所で地域と繋がって、地域の課題を持ち込んできてもらって、WSを開催したりして発信してもらって、課題解決に繋げていってもらったり、あるいは他の地域と繋がって補完し合ってマイナスをプラスに出来るようになってもらえたら良いなと願っています。


RELEASE; 代表 桜井肖典さん

社名のRELESEとは、手放すという意味です。

1年間に約100社、スタートアップから大企業までのビジネスデザインをしていますが、デザインをする前に「イノベーションするぞという手を一旦手放し、何が入ってくるのか?を見てみましょう」と言う想いを込めた社名です。


今日のお話にあった通り、イノベーションをして作っていっても、どんどん悪くなっていっては意味が無く、「どのようなイノベーションの方向性なのか?」を問う必要があるなと感じています。


また今日のスローイノベーションの対話の中で印象に残ったことが、2つ有ります。

1つ目は、「繋がりが資産となって、何でも”出来る”感覚になる」というお話です。

そこから2つ目、「耕し、育てるという感覚」について話が広がりました。


いまの経済が交換だとするならば、それはどんどん速くなり、速くなればなるほどギブとテイクの間に何も残らないのではないでしょうか?ゆっくりだと、何かが育っていく。この感覚になると、”出来る”ことがどんどん増えていくのではないかと感じました。


とは言え、このような想いを抱いていても、実際には、Fastの価値観を持っている自分の会社の中でやっていくのは難しいところもあるのではないかと思います。

Traffficでは、このような想いを同一にする会員さん同士が繋がり、一緒になって話をしたりギブし合ったりして、実際の会社に実績を持ち帰ってもらえるような場になったらと考えています。

対話


今夜、FastからSlowへシフトしてみませんか?という問いへお誘いしました。が、私たちもまだ挑戦している段階で、出来ている訳ではありません。

そこで次は、皆さん自身がいまされているSlowの実践や、「FastでしているコレをSlowにやっていきたい」というエピソードを共有してみたいと思います。

何が思い浮かぶでしょうか?

グループで話し合ったら、静寂の時間を取って、1人1人胸の中で感じてみましょう。


クロージング

Slow Innovation株式会社のアクティビティやゲストトークを糸口として、Slow Innovationについて考え、対話を深めてきました。

最後に参加者全員で大きな円を作り、いま感じていることをシェアして頂きました。


Slowを考える時に、自分の場合は盆栽が思い浮かびました。盆栽は手間暇がかかりますが、その時間の中で心を静め、考えを巡らせたりします。そのようなことを思うと、あえてSlowな時間を取ることが自分にとって豊かさを生む時間なのだと感じました。


Slow Innovationを起こすのに他者との関係性が大切なのは、自分が持っているリソースは自分では気づけないからではないかと感じました。自分では自分のリソースに気付けないからこそ、「あなたの持っている物は、誰かのためになるよ、何かの解決策になるよ」と気づかせてくれる誰かとの対話や、誰かと一緒に何かをすることが必要で、それがSlow Innovationの大切な要素なのではないかと思いました。


これまでのイノベーションは、「より利益を出すため」や「より効率を高めるため」の技術革新だったかと思いますが、イノベーションのくくりの中で「新しく大切にすること」を考え、「方向性を転換させること」がSlow Innovationの新しさの1つかなと感じました。加えて、「人とのつながりを大事にしましょう」ということを、ビジネス・事業の方向性として目指すようになったことが、2つ目の新しさなのではないかと思いました。


イノベーションは、シュンペーターの「既存のものを組み合わせる新結合」という意味が有名ですが、Slow Innovationとは、目の前に見えている課題解決では無くて、「それを生み出しているシステムや、私たちの有り様や関係性をゆっくり変えていこう。それこそが、本質的な課題解決に繋がるのではないか」という感覚を得ました。


皆さんと共有した様々な問いや対話を通して、Slow Innovationの可能性を感じて頂けたでしょうか?


「つなげる30人(Project30)」をきっかけとして繋がり広がった関係性を振り返り、みんなが「自分の利益よりもこの仲間のために」と思うコミュニティは、ファンタジーのようですが実際に起きるのだと実感しています。


イベントにご参加下さった皆さん、この記事を読んで下さっている皆さんと、これからぜひ一緒に、Slow Innovationを追求できれば嬉しいです。

text:内 英理香photo:梅村 武之
post:2019.11.28